●生まれてからの記憶
自分が生まれてからの記憶でたまに思い出すのが、小学1年生の頃の友達、多田くんとの思い出だ。
多田くんは口がちょっととがってたんだけど、すごく優しくておっとりして、真面目なやつだった。
ある日掃除の時間中、悪ガキの河野くんが掃除をサボって、先生に叱られた。その時に引き合いに出されたのが多田くんだった。
先生は「ちょっと河野くん! そんな口をとがらしたってダメ。多田くんを見てみなさい」と言った。
その時、全員の視線が多田くんに注がれた。いつも通り口をとがらせて、黙々と掃除をする多田くん。
そして3秒程の沈黙の後、みんなの視線に気づいた多田くんはみんなの顔を見て、「え?」と言った。
そしてまた、3秒程の沈黙があった後、あの悪ガキの河野くんは、「ごめんなさい」と言った。
河野くんは意外に大人だった。あの時のごめんなさいは、その後聞いたどんなごめんなさいよりも深かった。