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2009/07/12(日)

●人を育てるということ


2ヶ月前、自分が教育していた後輩がストレスから倒れた。精神を病んでしまったからだ。

後輩が今の仕事場に来たのは、2007年10月。第一印象は、プライドが高いわりに自信がなく、劣等感の強い人。そしてマイナス思考。雑学に強く、自分の知識や昔の自慢話をまくしたてるようにしゃべるタイプの人。正直、ちょっと苦手なタイプの人間だった。

ただ、自分が教育するという立場もあり、愛情をもって接した。

何もかもが自分とは正反対だった。楽観主義で理想主義でいい加減で自分大好きで人も大好きで常に前向きであろうとするタイプの自分とは、何もかも正反対だった。ただ、一点だけ自分と似ているところがあった。それは、「考え始めたことは最後まで考え通す」という癖だった。

ほどなくして、後輩とふたりで昼ごはんを食べるようになった。昼ごはん中は下らないことから真面目なことまで、色んな話をした。「傘」はもう時代遅れだから何か新しいものを作れないかなどという空想話から、お互いの恋愛観まで色んな話をした。

お互いの性格がいかに正反対か、という話もかなり早い段階からしていた。そんな話をしていくうちに、後輩は、自分に対して憧れを抱くようになっていった。良く「山内さんのようになりたい」と、そう言っていた。

仕事の面では、とにかく効率が悪かった。些細なことで頭を悩ませ、一日中同じ場所で足踏みをしていた。

例えば、テストデータを作る時に、1件のデータを作ればいいところを、なぜか5件のデータを作っていたことがある。話を聞いたところ、「5件あった方が安心するじゃないですか」。それもいったんエクセルにデータの内容を項目ごとに打ち込んでおいてから、もう一度それをデータとして打ち込むなんてことをやるもんだから、一日それにかかりっきりだった。そんなことをして必死で作ったエクセルを保存し忘れて結局1から作り直しになったり。

そういった効率の悪さに遭遇するたび、なぜその手段を取る必要があるのか、もっと楽に確実にできる方法はないのか、改善策を求めた。

必要があれば、こちらから改善策を提案した。そのまま放ったらかしで育てたのでは、使い物にならなかったからだ。それでも自信がなく、作業に迷いがあったからか、なかなか仕事を覚えてはくれなかった。

後輩の仕事を信じたことは、一度もなかった。ミスのない結果が一度もなかったからだ。自分の力で成し遂げられたこともなかった。

きっと悪循環になっていたんだと思う。自信がないから成果が出ない。成果が出ないから自信が持てない。

それから1年半が過ぎ、2009年3月。ある日、約束を平気で破る彼の態度が、他チームとの間で問題になってしまった。それから4月、同じようなことから彼の態度が、会社的にも問題になってしまった。

自分と上司は、誠意をもって仕事をすることの重要性を後輩に教え続けた。それから、5月。彼は倒れた。

つらいのは、後輩が全く自分と連絡を取ろうとしてくれないことだ。メールをしても、電話をしても、何のリアクションもない。一週間が経ってからは、こちらから連絡を取ることを一切しなくなった。自分からの連絡が、きっと後輩を苦しめてしまうだろうと思ったからだ。

それから2ヶ月の間、自分は自分のことを責め続けた。もっと自分に何かできたんじゃないか、自分に責任があったんじゃないか。罪悪感と後悔から、自分を責め続けた。

幸いにも、自分には相談できる友人がいた。友人と話をしながら、少しずつ罪悪感を乗り越え、ようやく真っ直ぐ事実と向き合えるようになった。それが、つい最近のこと。


考えた結果、苦しさの原因は「思いあがり」にあったことが分かった。自分に何とかできたはずとか、自分に責任があったはずなんてのは、単なる思いあがり。

あの時自分はできる限りのことをしたし、当時の自分にあれ以上のことを望んだってどうにもならない。

細かい反省点はいくつかある。もっと後輩からの苦しさのサインに気づいてあげれば良かったとか、もっとゆっくりしたペースで成長を促してやれば良かったとか、もっと上司からの叱責から救ってやれば良かったとか。

でも、それは後悔しても仕方のないこと。これからに活かすしかない。今できることは、今回のことがきっとお互いの未来にとってプラスに働くはずだって、そう信じることだけ。

後輩だって自分のイヤなところと向き合ういいきっかけになったかもしれないし、自分だって人を育てることの難しさを痛感した。結局、今回の事件がプラスだったのかマイナスだったのかは、未来になってみないと分からない。それなら、大切なのはこれから。

都合のいいような解釈をして、現実から目を背けてるように見えるだろうか。まぁ、それはそれで一向に構わない。

自分はたったひとりの弱い人間。そんな何でもかんでもできるわけじゃないんだし。それを認めることからもう一度始めようと思う。

自責の念や後悔、罪悪感にとらわれることなく、前向きに一歩ずつ進んでいくこと。これが今出せる一番納得のいく答え。

今日もまた一歩。明日もまた一歩。

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