●おとこ!
これはうちの母親の話なんだけど、うちの母親は普通の人よりも、生活のリズムが早い。
夜メシは夕方の4時半~5時とかに食べるし、夜は8時半には寝る。
8時半過ぎにピアノを弾いたり、階段をかけ上がろうもんなら、「ちょっとアンタ! 何時だと思ってんの!!」と叱られてしまう。自分にとっては、「まだ8時半なんですけど……」って感じだ。
先週のある日、そんな早寝の母親が夜の10時ぐらいに自身の部屋で突然叫びだした。聞いてみると、「おとこ! おとこ! おとこ!」と叫んでいる。
「おとこ! おとこ! おとこ! おとこ!」
……めちゃめちゃこわい。普段8時半に寝る母親が、10時過ぎにいきなり「おとこ!」と叫びだすという、大事件勃発。
何をどう想像してみても、その行為に必然性を見出すことができない。
とりあえずこわいので、しばらく無視をしつつ身を潜めていると、その叫びは絶叫に変わった。
「……男ー!! 男ー!!」
……こわい。こわすぎる。一体何が起こったというのか。母親は何かに取り憑かれたのか。
意を決して、状況を確認しに行くことにする。
自分の部屋と母親の部屋は、それぞれ2階にある。勢いよく飛び出して何かあったらこわいので、できる限り音が立たないよう、そーっと自分の部屋の扉を開く。
廊下も足音が聞こえないよう忍び足で、ゆっくりと母親の部屋に近づいていく。
そして、母親の部屋の前に着いた。中からは依然として、叫び声が聞こえる。
「……どうした?」
小さな声でそう聞いてみると、叫び声は止まった。少しの間を置いて、「入っておいで」という声が聞こえた。
……いよいよこわい。自分は「……どうした?」と聞いたのであって、入室許可を求めた訳ではない。
逃げ出したい気持ちを押さえつつ、そーっと、母親の部屋の扉を開けるとそこには、Nintendo DSを片手に「性別を聞かれたんだけど、音声認識がうまく反応してくれないんだ」と口をとがらせる母親の姿があった。
「知るかー!!」
めずらしく叫んだ。それでもきっと、母親の部屋をあとにする自分はきっと、安堵に包まれた表情をしていたに違いない。
もう、本当にびっくりする。
夜中に「おとこー!!」と叫びだす母親。狂気があふれだしている。
そもそも音声認識だとしたって、母親は男じゃないし(笑)